保健室の目覚まし係になったら、学校一の沼男に捕まりました


「おはよう、咲奈ちゃん。眠そうだね?」

「お、おはようございます」

うそ! まさか、こんなところで先輩に会うなんて。

登校時間の廊下は、いつも生徒たちで賑わっている。

それにしても、先輩の笑顔っていつ見ても夏の太陽みたいに眩しい。

「こんなところで会うのは珍しいね? いやぁ、朝から咲奈ちゃんに会えたから、今日も一日頑張れそうだよ」

「……っ、」

そんなことを言われたら、やばい。

「あっ、シュシュ。さっそくつけてきてくれたんだ。可愛い」

私は、髪の毛のシュシュに手を当てる。

先輩、ちゃんと気づいてくれた。

勝手にほころんでしまう口角を、必死に引き締める。

「やっぱり自分があげたものをこうして使ってもらえると、嬉しいもんだね。咲奈ちゃん、今日も……」

「あっ! 須藤くんいたーっ」

「おはよう、海里くん〜!」

まだ喋っている途中だったけど、先輩は一瞬でファンの女の子たちに囲まれてしまう。

本当に人気者だなぁ、先輩は。あっという間にハーレム状態だ。

廊下を通りかかる生徒たちも、何事かとこちらへ視線を向けてくる。

「ごめんね、咲奈ちゃん。またね」

苦笑いの先輩が、ひらひらとこちらに手を振ってくれる。

学年の違う須藤先輩と、保健室以外で会うのは久しぶりだったけど。

先輩から声をかけてもらえたことが、どうしようもなく嬉しかった。

先輩に会えたから、今日の嫌な授業も頑張れる気がする──なんて、絶対に本人には言えないけれど。