教室に戻ると、私は自分の頬が緩んでいるのが分かって、慌てて手で押さえた。
「咲奈、なんかご機嫌だね?」
「え、そんなことないよ」
「絶対何かあったでしょ、その顔。にやにやしてるよ」
梨沙子に指摘されて、私はますます焦る。
「べ、別に、何もないから」
「ふーん、まぁいいけど」
追及されないよう、私はさりげなく話題を変え、その日の授業をどうにかやり過ごした。
放課後。鞄にシュシュをそっとしまい、家路につく。
家に帰ってからも、机の上でシュシュを取り出して、そっと眺めた。
淡いピンク色の生地に、指で触れてみる。
これを選んでいる先輩の姿を想像すると、なんだかむずむずして、顔がにやけてしまう。
夕食を食べながらも、お風呂に入りながらも、頭の片隅にはずっとあのシュシュのことがあった。
明日、これをつけて学校に行ったら、先輩はどんな顔をするだろう。
そんなことを考えながら眠りについたのは、久しぶりのことだった。
◇
そして、翌朝。
「ふぁああ」
あくびをしながら登校して来た私が、下駄箱で上履きに履き替え廊下に出ると。
「あっ!」
「……え?」
なんと、須藤先輩とバッタリ会った。



