無邪気にはしゃぐ梨沙子の隣で、私は曖昧に相槌を打つことしかできない。
やっぱり、あのとき見かけたのは須藤先輩だったんだ。
まさか、あの日に見かけたなんて、言えるはずもない。
「まぁ、海里くんみたいな人気者だし、彼女の一人や二人、いてもおかしくないよね」
「……そうだね」
そう答えながら、私は自分の心臓がやけにうるさいことに気づいて、私はノートに視線を落とした。
◇
その日から数日、いつも通りの学校生活が続いた。
数学の小テストがあったり、体育でバレーボールをしたり。
購買でたまたま淡いピンク色のパッケージのお菓子を見かけて、なぜか反応してしまう自分がいたり。
昼休みには相変わらず保健室に通っていたけれど、先輩は特に何も言ってこなくて、私はあの雑貨屋での出来事を、少しずつ自分の中で忘れかけていた。
そして迎えた、水曜日の昼休み。
いつも通り保健室へ向かうと、須藤先輩はすでに起きていて、何やらそわそわした様子で待っていた。
「あ、咲奈ちゃん。やっと来た」
「何ですか、その顔。何か企んでます?」
「企んでるって、人聞きの悪い」
そう言いながらも、ベッドの上に座ったり立ったりを繰り返す落ち着かない様子の須藤先輩。
「ねえ、咲奈ちゃん。こっち来て」
「な、何ですか」
「いいから、いいから」
促されるまま近づくと、先輩は照れくさそうに視線を逸らしながら、小さな紙袋を差し出してくる。
「これ、咲奈ちゃんに」
「え?」
まさか、これって……。



