保健室の目覚まし係になったら、学校一の沼男に捕まりました


いつもの制服姿とはまるで違う、洗練された、一足早い秋物のニットを纏った先輩が、モデルらしい完璧な角度でカメラを見つめている。

こんな大きさで、街中に先輩の顔があるなんて。

分かってはいたけれど、改めて突きつけられると、なんだか現実味がなくて、変な感覚になる。

「あ、それ最新の広告だ。海里くん、また新しいキャンペーンやってるんだね」

隣で梨沙子が、興奮した様子で広告を指さす。

「そ、そうなんだ」

私だけが知っている、あの寝起きの無防備な顔や、拗ねたときの子供っぽい表情は、この広告のどこにもない。

同じ人のはずなのに、まるで別世界の住人みたいだ。

そのギャップに、少しだけ胸のあたりがそわそわした。

「咲奈、どうかした? 急に固まって」

「ううん、なんでもない。行こっか」

平静を装いながらも、私はしばらく、あの広告の視線から逃れられずにいた。

◇

書店で目当ての参考書を買ったあと、梨沙子が「ちょっと寄り道してもいい?」と、隣の雑貨屋を指さす。

「うん、いいよ」

色とりどりの小物や文房具が並ぶ店内を、私たちはのんびりと見て回る。

そのとき、少し離れた棚のあたりで、女性客のひそひそ声が聞こえてきた。

「ねぇ、見て。あの人、めちゃくちゃかっこよくない?」

「ほんとだ。芸能人かな」

声のするほうへ視線を向けると、シュシュの並んだ棚の前で、キャップを目深に被り、黒のオーバーサイズシャツを着こなした男の人が立っていた。

え、須藤先輩……? うそ、まさかの本人?!