「そういうときは、先にあなたが名乗るべきでは?」
聞かなくても、先輩の名前は知っているけど。
「そうだね。俺の名前は、須藤海里。一応、モデルやってる」
「私は……平沢咲奈です」
「へぇーっ。咲奈ちゃんって言うんだ。名前も可愛いね」
須藤先輩が満足そうに目を細め、距離をぐっと詰めてくる。
あまりに自然な「可愛い」という言葉に、一瞬ドクンと心臓が跳ねて、必死に平静を装う。
「……別に、普通です」
「ううん、すごく可愛い。ねぇ咲奈ちゃん、俺の目覚まし時計になってよ」
「はい?」
私は、目が点になる。
キスの次は、目覚まし時計になってって。今度は何を言ってるの、この人。
「あの、全く訳が分からないんですが」
「ああ、ごめんごめん。俺、昼休みはいつもここで寝てるんだけど。昼休みが終わる前、保健室まで起こしに来てくれない?」
なるほど、目覚まし時計ってそういうことか……って納得している場合じゃない。
「どうして私がそんなことを。スマホのアラームを設定して、自分で起きればいいじゃないですか」



