先輩に『渡したいものがある』と言われてから、数日が過ぎた。
六月になり梅雨入りしたらしく、ここ数日は毎日のように雨が降っている。
「憂鬱だよねぇ、この時期」
朝のホームルーム前、隣の席の梨沙子がぼやいた。
窓の外は今日も灰色の雲に覆われていて、教室の中も心なしか湿っぽい空気が漂っている。
「傘持って帰るの忘れそうになるし、髪は広がるし」
「分かる。私も最近、雨の日は髪をまとめてるよ」
そう言いながら、私は自分の髪をひとつに結んだゴムを触る。
飾り気のない、ただの黒いゴム。
こういうところにも、あまりお洒落に気を遣わない自分らしさが出ているなと、ふと思う。
「咲奈って、いつも髪型シンプルだよね。たまには、可愛い髪飾りとかつけてみたら?」
「うーん。そういうの似合わないから、いいかな」
「そんなことないと思うけどなぁ」
梨沙子は不満そうに唇を尖らせたけれど、それ以上は追及してこなかった。
「そういえばさ」
ふと、梨沙子が声を落とす。



