「先輩の前だと、私も何だか、変なことばっかり考えちゃいます」
思わずそう呟くと、須藤先輩が目を丸くしてこちらを見た。
「なにそれ。可愛いこと言うじゃん」
「べ、別に可愛いことは言ってません」
慌てて否定する私を見て、須藤先輩がふっと目を細める。
「そうだ。今度、お礼っていうか」
「お礼?」
「うん。咲奈ちゃんに、何かお返ししないとなって思ってて」
言いながら、須藤先輩が珍しく、少しだけ気まずそうに視線を泳がせた。
いつもの飄々とした態度からは想像もつかない、そんな仕草。
「楽しみにしといて」
「……別に、いらないですけど」
「いいから。俺が、渡したいだけだから」
そう言った須藤先輩の顔は、いつものからかうような笑顔だったけれど、その頬がほんの少しだけ赤く見えたのは、夕焼けのせいだけじゃない気がした。
──先輩が、渡したいと言っていたもの。
一体、何なんだろう。
からかわれているだけなのか、それとも。
知りたいような、知るのが少し怖いような。
そんな気持ちを抱えたまま、私は先輩の隣を歩き続けた。



