保健室の目覚まし係になったら、学校一の沼男に捕まりました


「先輩の前だと、私も何だか、変なことばっかり考えちゃいます」

思わずそう呟くと、須藤先輩が目を丸くしてこちらを見た。

「なにそれ。可愛いこと言うじゃん」

「べ、別に可愛いことは言ってません」

慌てて否定する私を見て、須藤先輩がふっと目を細める。

「そうだ。今度、お礼っていうか」

「お礼?」

「うん。咲奈ちゃんに、何かお返ししないとなって思ってて」

言いながら、須藤先輩が珍しく、少しだけ気まずそうに視線を泳がせた。

いつもの飄々とした態度からは想像もつかない、そんな仕草。

「楽しみにしといて」

「……別に、いらないですけど」

「いいから。俺が、渡したいだけだから」

そう言った須藤先輩の顔は、いつものからかうような笑顔だったけれど、その頬がほんの少しだけ赤く見えたのは、夕焼けのせいだけじゃない気がした。

──先輩が、渡したいと言っていたもの。

一体、何なんだろう。

からかわれているだけなのか、それとも。

知りたいような、知るのが少し怖いような。

そんな気持ちを抱えたまま、私は先輩の隣を歩き続けた。