「んー、なんか今日は妙に疲れてさ。ちょっとだけ、寄りかからせて」
マスク越しの、少しくぐもった甘えるような口調に、私は思わず言葉に詰まる。
さっきまでの、あの作り込まれたモデルの顔と、今の子どもっぽく甘えてくる顔。
そのギャップに、なんだか頭がくらくらした。
「重いんですけど」
「そんなこと言わないでよ〜」
そう言いながらも、本当に体重をかけてくるわけではなくて、ただ軽く肩が触れる程度の距離を保っている須藤先輩。
「あのさ」
しばらく無言で歩いたあと、須藤先輩がぽつりと口を開いた。
「俺、昔さ。素の自分見せたら、都合よく使われたことあってさ」
「……え?」
「だから、あんまり人前で気を抜かないようにしてるんだけど」
先輩が、遠くを見るような目をする。
その一言に、息が詰まった。
都合よく使われる。その言葉の輪郭が、自分の記憶にある何かと重なる気がした。
──女の子らしくないから、と笑われたこと。
──告白したことを、笑い話にされたこと。
形は違うけれど、誰かに勝手に消費されるみたいな痛みなら、私にも覚えがある。
「……分かる、気がします」
自分でも驚くくらい、するりと言葉が口をついて出た。
「私も、昔。好きだった人に告白したことを、笑い話にされたことがあるので」
「え」
須藤先輩が、驚いたようにこちらを見た。



