「さて、俺もそろそろ着替えて帰るか」
須藤先輩がスタッフの荷物置き場から、黒いキャップと不織布マスクを取り出した。
「……先輩、もしかして変装するんですか」
「当たり前でしょ。このまま素顔で外歩いてたら、それこそ騒ぎになるじゃん」
キャップを目深に被り、マスクをつけると、さっきまでの華やかなモデルの雰囲気が嘘みたいに、ただの地味な男子高校生に見える。
「なんか、急に普通の人になりましたね」
「え、それ褒めてる? けなしてる?」
「褒めてます、多分」
「多分て」
そんなやり取りをしながら、私たちは並んで校門を出た。
夕陽に照らされた通学路を歩きながら、須藤先輩はさっきまでとは打って変わって、いつものように軽口を叩いていた。
「あー、疲れた。今日は焼肉食べて帰ろうかな」
「一人で行くんですか」
「え、咲奈ちゃんも来る?」
「行きません」
「即答かよ」
そんなやり取りをしながら歩いていると、須藤先輩がふらりと私の肩に寄りかかってきた。
「ちょっ、先輩!?」



