保健室の目覚まし係になったら、学校一の沼男に捕まりました


「あ……咲奈ちゃん、まだいたの?」

顔を上げた須藤先輩の表情に、私は思わずどきりとする。

さっきまでの、作り込まれた笑顔とは正反対の、ひどく疲れた顔だった。

「大丈夫ですか?」

「あー……うん。ちょっと、疲れただけ」

両手で自分の顔を覆う須藤先輩。

「今日、昼からずっとこんな感じでさ。カメラの前だと、笑ってなきゃいけないから」

「……」

「見んなよ、こんなの」

指の隙間から、須藤先輩が呟く。

普段のからかうような明るさは消え、ひどく弱々しい声だった。

私はその言葉に、少しの間、何も言えなかった。

頼まれてもいないのに、隣に座ることを選んだのは、自分の意志だった。

「……見ちゃいますよ。だって、心配だし」

「心配って」

「疲れてる先輩のこと、放っておけないので」

須藤先輩が、指の隙間からちらりとこちらを見る。

「……咲奈ちゃんって、ほんと変な子」

「よく言われます」

私が肩をすくめると、先輩の口元にほんの少しだけ、いつもの柔らかさが戻ってきた。