撮影が終わったのは、陽が傾き始めた頃だった。
スタッフの人たちが機材を片付け始め、須藤先輩は最後まで丁寧に頭を下げていた。
「須藤くん、今日もありがとうございました」
「こちらこそ、ありがとうございました」
そう言って見送る須藤先輩の背中は、どこまでも「モデルの須藤海里」のままだった。
スタッフを見送り終えた須藤先輩が、ふとこちらを振り返る。
「あれ、咲奈ちゃん。まだいたんだ」
「……なんとなく、気になって」
「もしかして、さっきの撮影を見て、俺に惚れ直した?」
にやりとした表情で、いつもの調子でそんなことを言ってくる。
「元から惚れてません」
「即答すぎない? ちょっとくらい、照れてくれてもいいのに」
「はいはい、お疲れさまです」
適当にあしらいながらも、そのやり取りに少しだけほっとする自分がいた。
さっきまでの、よそ行きの微笑みとは違う、いつもの軽口。
やっぱり、この人はこの人なんだと、なんだか安心する。
やがてスタッフたちが引き上げ、中庭に静けさが戻ってくる。
須藤先輩は、誰もいなくなったのを確認するように周りを見回すと、近くのベンチにどさりと腰を下ろした。
「……はぁ」
深いため息。
さっきまでの完璧な微笑みは、跡形もなく消えていた。
「先輩……?」
心配になって、私は木陰から出て近づく。



