きっとあの人にとっては、これくらいの距離感、日常の一コマでしかないのだろう。
先輩の周りには、いつだってああいう人たちがいる。
私なんかとは、住む世界がまるで違う。
分かっていたはずのことなのに、実際に目の当たりにすると、思っていたよりもずっと、胸にくる。
それに──嫉妬、なんて言葉を使うのはおこがましい気がした。
だって私は、須藤先輩の彼女でも何でもない。ただの目覚まし係だ。
それなのに、なんでこんなに、あの女性の指先が先輩の腕に触れているのが気になるんだろう。
名前のつけようがない感情が、胸の奥にもやもやと溜まっていく。
木陰に立ったまま、私はそれ以上、その光景を見ていられなくなって、そっと目を伏せた。
◇
何度目かのカット替えの合間、須藤先輩がふとこちらに気づいた。
「あ、咲奈ちゃん。悪いね、わざわざ」
いつもの調子に少しだけ戻った声で、こちらへ歩いてくる先輩。
「これ、充電器です」
「ありがとう、助かった」
充電器を受け取りながら、須藤先輩がポケットからスマホを取り出す。
充電器を挿す一瞬、ロック画面がちらりと目に入った。
──なんだろう、あれ。



