「はい、オッケーです。次のカット行きましょうか」
「はい、お願いします」
須藤先輩の受け答えも、いつもの軽口とは違う、きちんとした敬語だった。
その様子を眺めながら、私はなんだか胸がざわざわするのを感じていた。
すごい。これが、須藤海里という人の「本業」なんだ。
普段は保健室で気だるそうに寝てばかりいる先輩からは、ちょっと想像できないくらいの集中力と、プロとしての顔つき。
素直に、かっこいいと思ってしまった。
◇
休憩に入ると、共演者らしき女性が須藤先輩に駆け寄っていくのが見えた。
年上の、大人びた雰囲気のモデルさんだ。
「海里くん、お疲れさま。今日も決まってるね」
「あ、どうも」
「ねぇ。次のカットまでちょっと時間あるし、あっちで少し休もうよ」
女性が、须藤先輩の腕に自然な仕草で自分の腕を絡める。
須藤先輩は困ったように笑いながらも、はっきりと拒む様子もなく、されるがままになっている。
──慣れてる。
そう思った瞬間、なぜか胸の奥がすっと冷たくなった。



