充電器を手に、私は中庭へと向かう。
いつもは生徒たちが自由に行き来している場所なのに、今日はロープが張られ、大きな照明機材やレフ板を抱えたスタッフの人たちが忙しく動き回っていた。
普段の学校の風景とは、まるで別世界みたいだ。
「あ、平沢さんですか? 須藤くんから話は聞いてます、どうぞこちらへ」
スタッフらしき女性に案内され、私は撮影エリアの端へと通された。
そして、その中央に立つ須藤先輩の姿を見た瞬間、私は思わず息を呑んだ。
制服のブレザーを脱ぎ、シャツの袖を無造作にまくった須藤先輩が、カメラに向かって微笑んでいる。
いつもは自然に流れている前髪も、今日は軽くセットされていて、束感のある毛先が光を受けてつやつやと光っていた。
手首には、いつの間に着けていたのか、シンプルな革のブレスレットが揺れている。
いつもの、私をからかうときの緩んだ笑顔じゃない。
もっと完成された、作り込まれた表情。
「はい、須藤くんいいですよー。そのまま視線をもう少し左に」
カメラマンの指示に、瞬時に反応する須藤先輩。
視線の角度、口角の上げ方、肩の傾け方まで、まるで一枚の絵のように計算し尽くされていて。
いつも保健室で見ている、あの気の抜けた須藤先輩とは、まるで別人だった。



