保健室の目覚まし係になったら、学校一の沼男に捕まりました


放課後、スマホが鳴った。

『咲奈ちゃん、まだ学校にいる?』

須藤先輩からのメッセージだった。

先週、目覚まし係の連絡用にと、先輩のほうから連絡先を交換しようと言われて、断り切れずに交換していたのだ。

『います。まだ教室で、日直の仕事してます』

『前に言った、咲奈ちゃんにしか頼めないことなんだけど』

心臓が、跳ねる。

あの日から、ずっと気になっていた一文だった。

『今日、中庭で雑誌の撮影あるの知ってる?』

そういえば、今朝ホームルームで担任の先生が、「今日は放課後、中庭を貸し切りで使うから立ち入り禁止」というようなことを言っていた気がする。

なんでも、モデル事務所から制服特集の撮影協力の申し出があって、学校側もそれを了承したとか。

まさか、須藤先輩の撮影のためだったとは。

『撮影の場に、俺の知り合いを誰も入れたくないんだ。ファンの子だと絶対に大騒ぎになるし、スタッフでもない一般の生徒だと止められる。……でも、咲奈ちゃんなら』

『私なら?』

『咲奈ちゃんなら、俺のこと騒ぎ立てたりしないから。スマホの充電器、保健室に忘れちゃってさ。中庭まで、届けてくれない?』

なんだ、結局はいつも通りのお使いか。

そう思う一方で、「俺のこと騒ぎ立てたりしない、咲奈ちゃんだから頼みたい」という一文が、なぜか胸の奥にじんわりと残った。

『分かりました。持っていきます』

やれやれと思いながらも、教室から保健室へと向かう足は、なぜか少しだけ弾んでいた。

撮影現場なんて、テレビの中でしか見たことがない。

正直、少しだけ気になっていた。