その後の午後の授業は、驚くほどあっという間に過ぎていった。
放課後。夕風が差し込む教室を出て下駄箱に向かいながら、ふと窓の外の空を見上げる。
初夏の夕焼けが、校庭いっぱいに橙色を広げていた。
その色を眺めながら、私は自分の中に、今までとは違う何かが芽生え始めているのを、静かに感じていた。
──ポケットの中で、スマホが小さく震えた。
画面に表示されていたのは、須藤先輩の名前だった。
『今度、頼みたいことがあるんだけど。咲奈ちゃんにしか、頼めないことなんだ』
──私にしか、頼めないこと。
さっきまでのやわらかな気持ちが、一瞬で緊張に変わる。
今度は一体、何が待っているんだろう。
そう思いながらも、私はメッセージ画面を、何度も見返してしまっていた。



