──「咲奈ちゃん? 聞いてる?」
須藤先輩の声で、はっと我に返る。
いつの間にか、随分と長い間ぼうっとしていたみたいだ。
「あ……すみません、何ですか」
「いや、さっきから上の空だなと思って。何かあった?」
「別に、何も」
そう言って誤魔化そうとしたのに、須藤先輩は珍しく引き下がらなかった。
「嘘。絶対何かあるでしょ、その顔」
「先輩には関係ないです」
少し強い口調になってしまった。
でも、こんな話、先輩にする必要なんてない。
須藤先輩は、学校中の女の子からかっこいいだの綺麗だのと言われ慣れている人だ。
私の、こんな昔のちっぽけなコンプレックスなんて、話したところで理解されるとも思えない。
「べつに、慰めてくれなくていいです」
「慰めてるつもりはないけど」
ベッドの縁に座ったまま、まっすぐこちらを見つめてくる須藤先輩。
「ただ、咲奈ちゃんが今、何かに傷ついてるっぽいのは分かるから」
「傷ついてなんか……」
言いかけて、言葉に詰まる。
「傷ついてなんかない」なんて、嘘だ。今この瞬間も、胸の奥がずきずきしているのに。
「咲奈ちゃんはさ」
私の沈黙を見透かしたように、先輩が続けた。
「いつも、思ったことをはっきり言うだろ。俺に職権乱用ですって言ったり、理不尽な命令には無理ですって突っぱねたり」
「それが、何か?」



