保健室の目覚まし係になったら、学校一の沼男に捕まりました


かろうじて絞り出した声が、静まり返った教室にやけに大きく響いた。

握りしめた制服のスカートが、指先から伝わる震えでしわになっていく。

心臓が、肋骨を内側から殴りつけるみたいに激しく打っている。

やっぱり、断られるだろうか。

田辺くんは、少し驚いた顔をしたあと、困ったように目を伏せた。

「……ごめん」

「……っ」

はっきりとした『ごめん』だった。

「平沢さんのこと、そういう対象では見れないっていうか……。なんか、タイプの顔じゃないんだよね。もっと、こう……女の子らしい子のほうがいいなって」

目の前の景色が、一瞬すっと色を失ったような感覚がした。

耳の奥でキーンと甲高い音が鳴り響く。

『女の子らしい』『タイプの顔じゃない』。

胸の真ん中に冷たい刃物を突き立てられたような感覚に、息の仕方を忘れそうになる。

自分の何がいけなかったのか、うまく整理できないまま、私はただ「そう、ごめんね」と引きつった笑みを貼り付けて、逃げるようにその場を後にした。

学校からの帰り道。夕暮れの空が、やけに滲んで見えたことを覚えている。

泣いてなんかない、と自分に言い聞かせながら、家までの道のりをただ黙々と歩いた。

『女の子らしい子』って、どんな子なんだろう。

私は、何が足りないんだろう。

鏡を見るたびに、自分の顔立ちや、仕草や、話し方まで、全部が急に不安になった。