「……はいはい。とにかく、反省してるなら良かったです」
そう呆れたように返しながらも、私の胸の奥のモヤモヤはすっかり消えていた。
でも──『可愛い』と言われるたびに、私の中で何かがちくりと痛む感覚だけは、まだ残っている。
今朝の梨沙子の言葉も、今の先輩の言葉も、きっとただの何気ない一言のはずなのに。
その理由を、須藤先輩は知らない。
◇
──あれは、中学二年生の冬だった。
放課後、教室に残っていたのは私と、同じクラスの男子──田辺くんだけだった。
一学期の頃から、密かに気になっていた相手だった。
サッカー部で、いつも明るく笑っていて、クラスの誰にでも分け隔てなく接する人。
彼が誰かと話しているところを、教室の隅からこっそり見ているだけで、それなりに満足していたはずだったのに。
冬になって、彼と同じクラスでいられる時間が残り少なくなってきたとき、このまま黙って終わらせるのは嫌だと思ってしまった。
だから、勇気を振り絞った。
「あの、田辺くん。ちょっと、いいかな」
放課後の誰もいない教室。西日が差し込む窓際で、私は震える声で彼に気持ちを伝えた。
「あ、あの……わ、私、田辺くんのことが好きです。もしよかったら、付き合ってください!」



