昨日のことを、まだ引きずっている。
『もう二度と、先輩のお願いなんて聞きませんから!』
そう言い放って保健室を飛び出してから、一晩経った今も、胸の奥のモヤモヤは晴れないままだった。
須藤先輩は、あのあとどんな顔をしていたんだろう。
謝りたいのか、それとも呆れているのか。自分でもよく分からないまま、私は重い足取りで学校へと向かった。
「ねぇ、咲奈。今日の制服のリボン、結び方アレンジした? すごく可愛い!」
朝のホームルーム前、梨沙子がそう言って私の胸元を指さした。
「あ、ありがとう……」
素直にお礼を言いながらも、心のどこかで小さくざわつくものがある。
可愛い、という言葉。
きっと梨沙子は、ただの世間話のつもりで言っただけなのに。
私はいつも、その言葉をどう受け止めていいのか分からなくなる。
「何、微妙な顔してるの?」
「ううん、何でもない。ありがとうね、梨沙子」
曖昧に笑って誤魔化しながら、私は机の上のノートに視線を落とした。
授業の間も、頭の片隅にはずっと昨日の続きがちらついていた。
このまま何もなかったフリをして、いつも通り保健室に行けばいいのか。
それとも、顔を合わせるのを避けたほうがいいのか。
結論の出ないまま、気づけば四限が終わっていた。



