「すみません。今日はもう、行きます」
これ以上、この場にいたくなかった。
須藤先輩が何か言いかけるのが聞こえた気がしたけれど、私は振り返らずに保健室を飛び出した。
──ガラッ。
扉を閉める音が、いつもよりずっと大きく響いた気がした。
廊下を歩きながら、まだ胸の奥がじんじんと熱い。
怒っているのか、悲しいのか、自分でもよく分からない感情がぐちゃぐちゃに渦巻いていた。
『咲奈ちゃん、俺は……』
さっき先輩が言いかけた言葉の続きは、結局聞かないまま終わってしまった。
聞きたくなかったわけじゃない。ただ、あのときはどうしても、その場にいられなかっただけで。
明日、また保健室に行かなきゃいけないことを思うと、憂鬱で仕方なかった。
でも、行かないという選択肢も、今の私にはなぜか浮かんでこなかった。
怒っているくせに、それでもまだ、あの人のことを気にかけている自分が、一番厄介だった。



