キスを拒んだら、学校一の沼男に捕まりました


そんな迷いが一瞬よぎったけれど、結局、鞄の中からスポーツドリンクも取り出してしまう。

「はい、どうぞ。……あと、これも」

「ん? これは?」

「今日、暑いので。先輩、寝起きでちょっと疲れてそうだったから」

「……俺、これ頼んでないけど」

「頼まれてないですけど、まぁ、その、ついでです。ついで」

早口でごまかしながら、私は牛乳パックのふちをぎゅっと指で挟んだ。

頼まれてもいないことをするなんて、我ながら余計なお世話だ。

須藤先輩が、目を丸くしてこちらを見ていた。

「咲奈ちゃんって、本当は結構優しいよね」

「べ、別にそんなんじゃ」

図星を指されて、余計にしどろもどろになる。

慌てて否定しようとした拍子に、持っていた自分の牛乳パックのストローの角度を誤って、勢いよく頬に牛乳が飛んだ。

「……っ、うわ!」

「ぶはっ、何やってんの咲奈ちゃん」

須藤先輩が、思いきり吹き出す。

「な、なんでもないです! 自爆しただけなので、見ないでください!」

「ほら。ここ、まだ牛乳ついてる」

先輩の指先が、私の頬に向かって伸びてくる。