キスを拒んだら、学校一の沼男に捕まりました


会計を済ませて保健室へ戻ると、須藤先輩はベッドに寝転んだまま、さっそく袋を開けようとしていた。

「……ちょっと待ってください」

「ん?」

「まさか、そのままベッドで食べるつもりですか?」

「え、ダメなの?」

「ダメに決まってます。ここ、具合悪い人が寝るところですよ。パンくずとか落ちたらどうするんですか!」

「別に、気をつけて食べるから平気だって」

「先輩が思ってるより、こういうのって案外散らかるものなんです」

私がじろりと見つめると、須藤先輩は少し不服そうな顔をしながらも、渋々ベッドから起き上がった。

保健室の隅にある丸椅子を引っぱってきて、先輩の前に置く。

「ここで食べてください」

「うわ、なんか監視されてるみたいで落ち着かないんだけど」

「監視じゃないです。ただの衛生管理です。そもそも、先生のいない間にこそこそ食べるの、なんか悪いことしてる気分になりません?」

「え、咲奈ちゃんが誘っといて今更?」

「誘ってないです。先輩が食べたいって言ったんです」

「まぁまぁ。それに、これくらいで怒るほど柄本先生厳しくないから。むしろ、他の生徒の対応とか、職員室との行き来とかで、しょっちゅう席外してるし」

「先生、大丈夫なんですか、それ」

「知らない。まぁ、保健室に先生がいないこと自体、割と日常茶飯事だから」

軽い調子でそう言う先輩に、私はなんとも言えない気持ちになりつつも、それ以上は突っ込まないことにした。

私はパンと牛乳を先輩に差し出したあと、一瞬だけ手を止めた。

やっぱり、渡すのはやめようか。