キスを拒んだら、学校一の沼男に捕まりました


振り返ると、そこには昨日、保健室で須藤先輩を取り囲んでいた二年の先輩たち。田村さんと、鈴木さん。

「あなた、たしか……昨日の一年生よね?」

田村さんが、値踏みするような視線をこちらに向けてくる。

心臓が、嫌な音を立てて跳ねた。

まさか、あのときの「頭突き」の件で、今になって何か言われるんだろうか。

「海里くんが、あなたのこと庇ってたけど。本当に、ただ転んで頭ぶつけただけなの?」

鈴木さんの声には、昨日とは違う、探るような響きが混じっている。

──気づかれてる。

昨日のあの言い訳を、二人はどこまで信じてるんだろう。

「それに、さっきも見たわよ。あなた、また保健室に入っていったでしょ」

「昼休み、いつもあそこにいるの?」

……見られていた。

まさか、目覚まし係のことまで、もう知られているんだろうか。

とっさに何と答えるべきか分からず、私は口を開いたまま、言葉を継げなかった。

田村さんと鈴木さんの視線が、じっとこちらに向けられている。

まだ何かが始まったわけじゃない。それでも、確かに。

──明日からのことが、昨日よりも少しだけ、厄介な方向に転がり始めている気がした。