キスを拒んだら、学校一の沼男に捕まりました


「うるさいなぁ、寝言だよ寝言! 人はね、寝てるときに色んな単語を口走る生き物なの!」

「今、バッチリ目開いてましたよね?」

「開けたばっかで、脳みそはまだ半分夢の中だったんだよ、俺は!」

あからさまに早口で捲し立てる須藤先輩を見て、私は目を細める。

完全に怪しい。絶対に何か誤魔化している。

もしかして、さっき梨沙子が言っていた「三年の先輩」で合ってるのかもしれない。

一ヶ月ももたなかったっていう、その人のことを。

だとしたら、まだ気持ちが残ってるってこと……?

会ったばかりの私が、そんなことを詮索する立場でもないのに。

「……別に、知りたくもないですけど」

「そう? なら別にいいじゃん、寝言の内容なんて」

「まぁ、いいですけど。それより、早く起きてください。もう昼休み終わりますよ」

「あー、はいはい」

須藤先輩がベッドから起き上がり、大きく伸びをする。

その仕草ひとつでも、妙にモデルらしく様になっているのが、地味に腹立たしい。

「にしても咲奈ちゃん、律儀だね。まさか、本当に来てくれるとは思わなかった」

「約束、しましたから。破ったら、恐ろしいことになりそうでしたし」

「ふーん。咲奈ちゃんって、真面目なんだ」

ふいに伸びてきた先輩の手が、私の頭にぽんと乗せられた。

ポンポンと、二度、優しく撫でるように動く。

うわ、男の人に頭を触られるの、初めてかもしれない。