「ああ、ちゃんと咲奈と付き合ってるって伝えたよ」
「え、そうなんですか? この前は、まだ言わないでおこうって話してましたよね」
思わず、聞き返してしまう。
「あー、うん。最初はそのつもりだったんだけどさ」
先輩が、少しばつが悪そうに頭をかく。
「田村さんたち、なんか妙に勘が良くてさ。この前も、思いっきりカマかけられて。このまま隠し通すの、逆に無理があるなって思ったんだよね。それなら、いっそ自分の口からちゃんと伝えたほうがいいかなって」
「……そうだったんですね」
「まぁ、最初は色々言われたけどさ」
困ったように、彼が笑う。
「咲奈のこと悪く言ったら、俺が黙ってないって、はっきり言っといた。あと、交際のことあんまり広めないでほしいってお願いもしたよ。俺の仕事柄、変な噂になったら咲奈にも迷惑かかるだろうから」
その言葉に、頬が緩む。
先輩なりに、ちゃんと私のことを考えてくれているんだと分かって、嬉しかった。
実際、あれから田村先輩たちに廊下で会っても、以前ほどの威圧感はなくなっていた。
先日なんて、すれ違いざまに「ちゃんと海里に大事にされなさいよ」と、ぶっきらぼうに声をかけられたくらいだ。
きっと、完全に仲良くなれたわけではないけれど。
それでも、以前のような一方的な敵意ではなくなったことに、少しほっとしていた。
「あ、そういえば咲奈ってさ」
「はい?」
「未だに、俺のこと『海里先輩』って呼ぶよね」
「あ……」
指摘されて、初めて自分の呼び方を意識する。



