キスを拒んだら、学校一の沼男に捕まりました


──シャッ。

あ、本当にいた。須藤先輩。

スースーと規則正しい寝息を立てて、気持ち良さそうに眠っていらっしゃる。

ほんの少し乱れたサラサラの茶髪に、長く影を落とす睫毛。

昨日も思ったけど、寝顔だけは本当にきれい。

さっき聞いた話のことなんて忘れてしまいそうになるくらい、綺麗な顔。

──なんて、見とれてる場合じゃない。時間、もうあまりない。

よしっ。

「須藤先輩! 起きてくださーい」

「んーっ」

私の声に、須藤先輩がゆっくりと瞼を開ける。

少しハチミツ色に見える瞳が、まだ焦点の合わないままぼんやりと天井をさまよっていた。

「……ん。今、何時……」

寝ぼけているのか、視線がどこか宙をさまよったまま、こちらを見ようとしない。

「もうすぐ、昼休み終わりますよ。ほんとにギリギリなので、早く」

「そっか。ちゃんと来てくれたんだ」

とろんとした目で、ふにゃりと笑う先輩。

うっ。寝起きの、無防備すぎる笑顔。なんだか、いつもよりもずっと幼く見える。

まるで、さっきまで教室で見ていた雑誌の中の完璧な『須藤海里』とは、別人みたいだ。

「り……」

「え?」