「私にも、先輩に聞いてほしい話があります」
胸の奥から込み上げてくる気持ちを抑えられなくて、私はそう切り出していた。
震えそうになる声を、なんとか押し出す。
「前に少しだけ話した、告白して笑い話にされたことがあるっていう話……今日は、ちゃんと最後まで聞いてほしいんです」
須藤先輩が、静かに頷く。
「実は、私……中学二年生のとき、田辺くんっていう、好きだった人に告白して、振られたことがあるんです」
須藤先輩は、何も言わずに、じっと私の言葉に耳を傾けてくれた。
「『タイプの顔じゃない』『もっと女の子らしい子がいい』って言われて。それだけじゃなくて、あとで彼が友達に、私に告白されたことを笑い話にされてるのを、偶然聞いてしまって」
あのときの、廊下の壁に背をつけたまま動けなかった記憶が、鮮明によみがえる。
「それ以来、可愛いって言われても、素直に喜べなくなって。誰かに褒められるたびに、どうせ社交辞令だって、決めつけるようになってしまったんです」
須藤先輩は時折、黙って頷きながら、私の話を最後まで聞いてくれた。
「だから、先輩が最初に『可愛い』って言ってくれたときも、素直に受け取れなくて。ずっと、疑ってばかりでした」



