保健室の目覚まし係になったら、学校一の沼男に捕まりました


作業が一段落した頃には、すっかり日が傾いていた。

グラウンドに並べられた用具の影が、夕陽を受けて長く伸びている。

「明日、天気良さそうだね」

少し離れた場所で、須藤先輩がぽつりと呟いた。

「そうですね」

短く答えることしかできなかったけれど、その一言には、いつものからかうような響きはなくて。

ただ純粋に、明日を気にかけているような、静かな声だった。

「咲奈ちゃんの種目、障害物競走だっけ」

「え……知ってたんですか」

「まぁ、ちょっとね」

先輩が、少し照れくさそうに視線を逸らす。

やっぱり委員長が言ってた通り、私の種目を調べてくれてたんだ……!

「応援、行くから」

たったそれだけの一言に、耳の奥が熱くなった。

帰り支度をしながら、私はちらりと先輩のほうを見る。

同じクラスでもないのに、こうしてまた、係を通じて言葉を交わせるようになったこと。

そして、こっそり私の出場種目を調べてくれていたという、その優しさ。

まだ、リンちゃんのことは何も解決していない。

田村先輩たちに言われたことも、まだ胸の奥に引っかかっている。

それでも、明日先輩が見ている前で、あの障害物競走を走るんだと思うと、不思議と身体の奥から力が湧いてくる気がした。

理由もなく、何かが変わる予感がした。

グラウンドを飾る夕焼けを見上げながら、私はその予感を、そっと胸の中にしまい込んだ。