保健室の目覚まし係になったら、学校一の沼男に捕まりました


須藤先輩が、さっと手を貸してくれた。

伸びてきた彼の手が、私の手にほんの一瞬重なる。

その温度に、指先がじんと痺れた。

「あ……ありがとうございます」

「無理しなくていいのに。咲奈ちゃん、意地っ張りだよね」

その一言に、いつもの調子がわずかに戻っているのを感じて、なんだかほっとした。

作業の途中、休憩がてら二人で倉庫の陰に座り込んだときも、どちらからともなく、少しずつ言葉が増えていった。

「明日で、用具の準備も一段落だね」

「そうですね。ハードルの数、これで合ってますよね」

「うん、多分」

たわいない確認の会話でしかなかったけれど、それでも、一週間ぶりに交わすまともな時間ではあった。

肩が触れそうな距離で並んで座っていることに、途中で気づいて、私はそっと身体を離す。

先輩もそれに気づいたのか、小さく笑っただけで、何も言わなかった。

◇

そんな作業の帰り道、昇降口を出たところで、聞き覚えのある声に呼び止められた。

「あら、平沢さんじゃない」

振り返ると、田村先輩と鈴木先輩が立っていた。

「あなた、まだ懲りずに海里と一緒にいるんだって?」

鈴木先輩が、腕を組みながら鋭い視線を送ってくる。