【海里side】
咲奈ちゃんが保健室に来なくなってから、保健室で過ごす昼休みが、急に間延びして感じるようになった。
『もう構わないで』と言われたのだから、俺には、これ以上どうすることもできない。
そう分かっているのに、頭の片隅ではいつも、あの子のことばかり考えてしまう。
そんな中、ある日のホームルームで、俺は体育祭の実行委員に立候補した。
実行委員に手を挙げたのは、正直、そこまで深く考えてのことじゃなかった。
去年もやってたし、係の勝手も分かってるから、くらいの軽い気持ちだった。
でも、委員の名簿に『平沢咲奈』の名前を見つけたときは、柄にもなく心臓が跳ねた。
咲奈ちゃんが体育祭でどの種目に出るのか、それとなく調べてしまったのも、我ながら分かりやすいと思う。
こんなふうに、誰かの一挙一動が気になって仕方ないなんて、初めてだった。
あの日、咲奈ちゃんに言いかけた言葉を、最後まで言わせてもらえなかったこと。
『もういいです』と遮られて、追いかけることもできなかった、あの背中。
言い訳のしようもないくらい、自分が不甲斐なかった。
もっと早く、ちゃんと説明しておけば良かった。
そんな後悔ばかりが、頭の中をぐるぐると回っていた。
【海里side 完】



