ある日の昼下がり、自習時間の合間に、たまたま二年生の体育の授業がグラウンドで行われている時間があった。
「はぁ、次の授業は数学かぁ。だるいなぁ」
梨沙子が頬杖をつきながら呟く。
私は相槌を打ちながらも、視線は自然と窓の外へと向いていた。
グラウンドを走る生徒たちの中から、なぜかすぐに須藤先輩の姿を見つけてしまう。
リレーの第一走者らしく、風を切ってトラックを一人鮮やかに駆け抜けていく姿は、遠目からでもすぐに分かった。
バトンを渡したあと、クラスの男子たちとハイタッチして弾けるように笑う声が、風に乗ってかすかに教室まで届いていた。
楽しそうだな、と思う。
そして同時に、私とすれ違っていても先輩はいつも通り眩しくて、あの輪の中に自分が入れないことを、少しだけ寂しく感じてしまう自分がいた。
「咲奈、聞いてる?」
「あっ、ごめん。何?」
「もう、上の空なんだから」
梨沙子に苦笑いされて、私は慌てて窓の外から視線を引き剥がした。
こんなふうに、気づけば先輩の姿を目で追ってしまう自分に、嫌気が差す。
あんなに強く拒絶しておいて、今更こんなことを思うなんて、勝手すぎる。



