保健室の目覚まし係になったら、学校一の沼男に捕まりました


「じゃあ平沢さんは、余った綱引きと障害物競走ね」

「……はい」

運動があまり得意ではない私にとって、正直、気の重い結果だった。

「あ、それと体育祭の実行委員、クラスから男女ひとりずつ出さなきゃいけないんだけど……誰かやってくれる人いない?」

先生の言葉に、教室中がしんと静まり返る。

結局、誰も手を挙げないまま押し付け合いのジャンケンになり、私は見事に負けてしまった。

種目だけでも憂鬱なのに、実行委員まで引き受けることになって、私は心の中で大きくため息をついた。

◇

それから、体育の授業のたびに、各競技の練習が始まった。

「はい。次、障害物競走の練習するよー」

体育教師の号令で、グラウンドに整列する。

ハードルを越えて、大きな網をくぐり、平均台を渡る。

言葉にすると簡単そうなのに、実際にやってみると、身体がうまく動いてくれない。

「平沢さん、もっと腰落として!」

先生に指摘されながら、私は何度も同じコースを走った。

「咲奈、頑張れー!」

友人たちの声援を受けながらも、タイムはなかなか縮まらない。

そんな練習の合間、ふと視線を感じてグラウンドの隅を見ると、二年生のクラスが別の種目の練習をしているのが目に入った。

その中に、須藤先輩の姿があった。

リレーのバトン練習をしているのか、軽やかに走る先輩の姿は、遠目に見てもすぐに分かる。

私は思わず、目で追ってしまう。

でも、先輩はこちらに気づく様子もなく、練習に集中していた。

当たり前だ。もう、先輩から話しかけてくることもなくなったんだから。

そう自分に言い聞かせながら、私は視線を逸らして、自分の練習に戻った。