その先を、私は聞くのが怖かった。
彼女なのか、それとも違うのか。
どちらにしても、今の自分には受け止めきれない気がした。
このまま最後まで聞いてしまったら、もう後戻りできなくなる。
信じて、それでもしリンちゃんのことが本当だったら、今よりもっと苦しくなる。
そう思ったら、身体が勝手に動いていた。
「もういいです」
先輩の言葉を遮るように、私は席を立った。
椅子が床にこすれる音が、やけに大きく響く。
痛いほどの視線が、四方から突き刺さる。
「私は、先輩の都合の良い女とか、そういうのになるのは御免です」
自分でも驚くくらい、はっきりとした声だった。
「先輩、もう私に構わないでください!」
言い終えると同時に、私は鞄も持たずに教室を飛び出していた。
「待って、咲奈ちゃん……!」
背中越しに、先輩の声が聞こえた気がしたけれど。
私は、振り返らずに廊下を走り続けた。
上履きの底が、廊下の床を打つ音だけが、耳の奥で響いていた。



