「聞いた話だと、購買で二人で一緒にパン買ったりしてたんでしょ? ほんと仲良いわよね」
その一言に、教室の空気が、さらにざわつく。
「や、あれはただ、たまたま……」
「まぁ、いいけどさ。青春してて楽しそうだよね」
田村先輩の言葉には、どこか棘があった。
「でも、平沢さん。前にも言ったと思うけど。海里は本気にならない人だから、あんまり期待しすぎないほうがいいと思うよ」
その言葉に、頭の中がぐらりと揺れる。
夏祭りで耳にした噂。そして、先輩が愛おしそうに呼んでいた、あの名前。
自分でも気づかないうちに、私は下を向いてしまっていた。
もしかしたら、本当に田村先輩の言う通りなのかもしれない。
私はやっぱり、大勢いる女の子のうちの、名前もつかない一人でしかないのかもしれない。
須藤先輩が、五日間も待っていてくれたという事実さえ、今はもう素直に受け止められなくなっていた。
だって、私なんかを待つより、「リンちゃん」と呼ばれる人のほうが、きっとずっと相応しいはずだから。
信じかけた瞬間に、また突き落とされる。
傷つくくらいなら、最初から期待なんてしなければよかった。



