「別に、責めてるわけじゃないんだけど。なんか、ちょっとだけ、ムカついた自分がいて」
先輩が、照れくさそうに頭をかく。
いつもの余裕たっぷりな態度からは想像もつかない、その素直な物言いに、私は思わず目を丸くした。
でも同時に、こんなふうに人前で来られてしまったことへの気まずさと、申し訳なさで、顔を上げることができなかった。
「あの。クラスのみんなが見てます、先輩」
「見られて困ることでもした?」
「そういうわけじゃ、ないですけど」
しどろもどろになる私を見て、クラスメイトの何人かが、ひそひそと言葉を交わしているのが聞こえた。
「え、あの二人って、そういう関係なの?」
「夏休み前にも噂あったよね」
その声に、私の心臓がぎゅっと締めつけられる。
そのとき、教室の入口にもう二人、見覚えのある顔が現れた。
田村先輩と鈴木先輩だった。
「あら。こんなところにいたんだ、海里」
「二学期早々、一年の教室に何しに来てるわけ?」
からかうような口調とは裏腹に、その目には鋭さが宿っている。
「別に、咲奈ちゃんに用があっただけだけど」
「またその子? 夏休み前にも噂になってたわよね。あんたたち」
田村先輩が、私のほうへ意味ありげな視線を送る。



