「いやぁ。咲奈ちゃんのクラス、何組か聞いてなかったからさ。探すのに苦労しちゃったよ」
教室にいた生徒たちの視線が、一斉にこちらへと集まる。
「どうして、須藤先輩がここにいるんですか?」
「どうしてって。咲奈ちゃんに、会いに来たんだよ」
えっ? 会いに来たって。
先輩のほうからわざわざ来てくれるなんてことは、初めてかもしれない。
「今、昼休みなのに。先輩、寝てなくて良いんですか?」
「ちょっと! 言っとくけど俺、いつも寝てばかりじゃないから」
須藤先輩が、唇を尖らせる。
「咲奈ちゃん、二学期になってから一度も保健室に来てくれないから。もしかして、何かあったのかと思って」
先輩の声は、いつもの軽い調子とは少し違って、どこか心配そうな響きを帯びていた。
「あ……えっと」
「五日も待ったんだよ、俺。今日も来なかったら、さすがに直接来ようと思ってさ」
五日間、待っていてくれたんだ。
その事実に、胸の奥がじんわりと温かくなる。
「それに」
先輩が、ほんの一瞬、気まずそうに視線を逸らした。
「この前、廊下からたまたま見えたんだよね。咲奈ちゃんが、隣の席の男子と、仲良く教科書覗き込んでるところ」
「……え?」
まさか、あれを見られていたなんて。



