保健室の目覚まし係になったら、学校一の沼男に捕まりました


夕方。私たちは連れ立って、地元の神社で開かれる夏祭りへと向かった。

参道には夜店が並び、提灯の灯りが、夕暮れの薄闇の中でぼんやりと浮かび上がっている。

醤油の焦げる香ばしい匂いと、綿あめの甘い匂いが混ざり合って、夏の夜の空気に溶けていた。

「咲奈、金魚すくいやろうよ!」

梨沙子に手を引かれて、私たちは屋台の前にしゃがみ込む。

薄いポイを使って、逃げ回る金魚を何度も追いかけては、あっけなく破れてしまう。

「あー、また破れた!」

「私も全然すくえないよ〜」

結局、ふたりとも一匹もすくえないまま、悔しがりながら店主さんにおまけしてもらった小さな金魚を、袋に入れてもらった。

「見て見て、りんご飴。真っ赤で綺麗」

友人のひとりが指さす屋台で、私たちは順番にりんご飴を買う。

パリッとした飴の下から、甘酸っぱいりんごの果肉が顔を出す瞬間が、なんだか無性に嬉しい。

「ねぇ、須藤先輩ってさ」

りんご飴を齧りながら、友人のひとりがふと話題を振ってきた。

「最近、気になってる人がいるらしいって、噂になってるの知ってる?」

「え……」

「詳しいことは、誰も知らないんだけどね。モデル仲間から聞いた話が回ってきてるだけみたいで」

ドクン、と心臓が嫌な音を立てた。

手に持っていたりんご飴の重みが、急に消えたみたいになる。

気になってる人──それって、まさか……。