「咲奈、今日元気ないね。夏バテ?」
ある日のプールの帰り道、梨沙子に指摘されて、私は慌てて笑顔を作る。
「うーん、そうかも」
夏バテなんかじゃない。
多分これは、あの人に会えないことへの、ただの寂しさだ。
そう自覚してしまうと、なんだか無性に恥ずかしくなって、私は誤魔化すように話題を変えた。
◇
それからさらに一週間ほどが過ぎ、八月に入り、夏休みも折り返しを過ぎた頃。
「咲奈、今日のために浴衣持ってきた?」
約束の夏祭り当日。梨沙子の家に集合した私たちは、それぞれ持ち寄った浴衣に着替えていた。
「うん、お母さんが選んでくれたやつ」
淡い水色に朝顔の柄が入った浴衣を、私は照れながら広げてみせる。
「わぁ、めっちゃ可愛い! 咲奈、そういうの似合うと思ってた」
梨沙子や他の友人たちに褒められて、なんだかくすぐったい気持ちになる。
いつもは着ないような格好のせいか、鏡に映る自分が、少しだけ違う人みたいに見えた。
「咲奈、髪もセットしよっか。私、簡単な編み込みくらいならできるよ」
梨沙子がそう言って、私の髪を手早くまとめてくれる。
くすぐったいような、なんだか特別な気分になるような、不思議な時間だった。
「はい、完成。可愛い〜、咲奈」
鏡越しに見せてもらった自分の姿は、いつもよりずっと華やかに見えて、ちょっぴり照れくさかった。
もし、この格好を須藤先輩が見たら、なんて言ってくれるかな。



