「え、どうって……」
「保健室、しばらく開かないだろうし」
そう言われて、初めて気づく。
そっか。夏休みの間は、目覚まし係もお休みになるんだ。
「また、二学期に会おうな。咲奈ちゃん」
軽い調子の声。
けれど私は、なぜかその顔をまっすぐ見ることができなくて。
「……はい。それじゃあ、また」
短くそう言うと、私は逃げるように先輩の横を通り過ぎた。
背中に、先輩の視線を感じた気がしたけれど、振り返る勇気は出なかった。
このまま夏休みに入って、二学期にまた何事もなく会えるのだろうか。
そんな不安を抱えたまま、私は校門を出た。
◇
夏休みに入って、一週間ほどが過ぎた。
家族で近くの温泉に一泊旅行に行ったり、梨沙子たちと市民プールに出かけたり。
やることは色々あって、それなりに毎日は埋まっていたはずなのに。
ふとした瞬間、スマホの画面を意味もなく開いては、何も通知が来ていないことを確認する自分がいた。
昼休みの時間になるたびに、身体が勝手に「そろそろ保健室に行かなきゃ」と思ってしまうことにも、我ながら苦笑いする。
もちろん、夏休み中の学校で、保健室が開いているはずもない。
先輩の目覚まし係という毎日の習慣が、こんなにも自分の生活に染み込んでいたなんて。
離れてみて、初めて気づかされることばかりだった。



