購買での一件から、数日が過ぎた。
小さな噂は、思ったより早く落ち着いてくれた。
『須藤先輩と、咲奈が付き合ってるらしい』なんて話も一瞬流れたけれど、本人たちが特に何も反応しないものだから、すぐに別の話題にかき消されていったみたいだ。
それでも、廊下で須藤先輩とすれ違うたびに、周りの視線をちらりと感じてしまう癖だけは、なかなか抜けなかった。
そして、終業式の日がやってきた。
「はぁ〜、やっと夏休みだ〜!」
全校集会が終わり、教室に戻るなり、梨沙子が机に突っ伏して伸びをする。
「咲奈、夏休みの予定は?」
「うーん、まだ何も」
「そういえば、この前約束した夏祭り。あれ、来月の頭だって。楽しみだね」
「あ、うん。楽しみ」
クラスメイトの数人を交えて、夏休みの予定について盛り上がる。
こういう他愛もない時間が、いつも私をほっとさせてくれる。
◇
ホームルーム後。下駄箱で靴を履き替えていると、後ろから声をかけられた。
「咲奈ちゃん」
振り返ると、須藤先輩が立っていた。
「せ、先輩。お疲れさまです」
購買の一件以来、なんとなく先輩と話すときに、周りの目を気にする癖が一段と強くなってしまっている。
「今日で、一学期も終わりだね。咲奈ちゃん、夏休みの間はどうすんの?」



