保健室の目覚まし係になったら、学校一の沼男に捕まりました


教室に戻ってからも、私はどこか浮ついた気持ちのまま、午後の授業を受けていた。

「咲奈、さっきよりちょっと元気になったね」

放課後。梨沙子にそう言われて、私は苦笑いする。

「そう見える?」

「うん。なんか、朝より顔色良くなった気がする」

「……そうかも」

自分でも、少しだけ気持ちが軽くなっているのを感じていた。

須藤先輩は、いつもと変わらなかった。昨日のことを、何も知らないまま。

それが良いことなのか悪いことなのか、自分でもよく分からなかったけれど。

とりあえず今日一日、大きく態度を変えずに接することができたことに、少しだけ安堵していた。

「あ、そういえば咲奈。夏休み入ったら、駅前の神社の夏祭り行こうよ。毎年、八月にやってるやつ」

梨沙子が思い出したように言った。

「あ、うん。行く行く」

「今年はみんなで、浴衣着ようって話になっててさ。楽しみだね」

「……うん、楽しみ」

そう答えてから、ふと頭の隅に、須藤先輩の顔がちらついた。

先輩は、夏祭りとか行くタイプなんだろうか。

もし会えたら──そこまで考えて、私は慌てて首を横に振る。

田村先輩たちのこともあるし、あまり淡い期待は持たないほうがいい。