「じゃ、じゃあ先輩、どうぞ」
「い、いや。咲奈ちゃんが先に気づいていたなら、譲るよ」
お互いに譲り合っていると、近くにいた女子たちの視線が、さらにこちらへと集まってくるのが分かった。
「なんか、須藤くんと親しそうじゃない?」
「誰なの、あの子」
そのひそひそ声に、私は思わず身を縮める。
田村先輩たちの耳に、このことが入ったらどうしよう。
そう考えるだけで、パンを持つ手に、じわりと汗がにじんだ。
結局、店員さんに聞いて、同じ種類のパンがもう一つバックヤードにあることが判明し、二人とも無事にクリームパンを手に入れることができた。
「なんか、変な感じだったな、今の」
「そうですね」
購買を出て、教室へと戻る道すがら、私はまだ周りの視線が気になって仕方がなかった。
購買を出て、教室へと戻る道すがら、先輩がふと私の持っていたパンの袋のほうへ手を伸ばした。
「それ、重くない? 持つよ」
「あ、大丈夫です。そんな重くないので」
「そう? 遠慮しなくていいのに」
さりげない一言だったけれど、なんだかこそばゆい気持ちになる。
こういう、ふとした優しさに、いちいちどきっとしてしまう自分が、ちょっと悔しい。
そのまま教室へと戻る間も、私はまだ周りの視線が気になって仕方がなかった。



