「今日は、俺も一緒に選ぶよ。咲奈ちゃんは、何にする?」
先輩は、周りの視線などまるで気にしていない様子で、変わらない口調で話しかけてくる。
「んー、まだ決めてないです」
購買に着くと、すでに数人の女子生徒が須藤先輩に気づいて、こちらをちらちらと窺っていた。
「須藤くーん、久しぶり」
「あ、どうも」
親しげに声をかけてくる女子に、先輩は愛想よく答えている。
その光景を横目に見ながら、私はできるだけ目立たないよう、パンの棚の隅へと移動した。
パンの棚には、残りわずかな品数しか並んでいなかった。
「あ、あれ美味そう」
先輩が指さしたのは、最後の一つになっていた、クリームパンだった。
「それ、私も気になってたんですけど」
「え、マジで?」
同時に手を伸ばした瞬間、私たちの指先が、パンの袋の上でこつんとぶつかった。
「あ……」
「……っ」
一瞬、時間が止まったみたいになる。
触れ合った指先から、昨日のベッドでの熱や、あの強い腕の感覚が一気に蘇ってきて、息が詰まりそうになった。



