「な、何もないです。ほんとに」
慌てて否定する私を、須藤先輩がじっと見つめてくる。
その視線から逃れるように、私は思わず目を逸らした。
「ふーん。まぁ、いいけど」
先輩は、それ以上は追及してこなかった。
正直、ほっとしたような、少し寂しいような、複雑な気持ちになる。
聞きたいのに、聞けなかった。
自分の意気地のなさに、心の中でため息をつく。
「そうだ、咲奈ちゃん。購買、一緒に行かない? パン買いに」
「……いいですけど」
昼休みの後半、須藤先輩がそんな提案をしてきた。
いつも私にお使いを頼むばかりの先輩が、珍しく自分から誘ってくる。
ふと、田村先輩たちの、あの怖い顔が脳裏をかすめた。
先輩と一緒に購買なんかに行ったら、また目をつけられるんじゃないだろうか。
そんな不安がよぎったけれど、断る理由を見つけられないまま、私は先輩の後についていった。
購買までの道のりを、私たちは並んで歩く。
案の定、廊下ですれ違う女子たちが、須藤先輩の姿に気づくたびにざわめいた。
「あ、須藤先輩だ」
「え、隣にいるの誰?」
ひそひそと交わされる視線が、痛いほど背中に刺さる。



