思い切って切り出した瞬間、須藤先輩がきょとんとした顔をする。
「昨日? なんかあったっけ」
「あ、いえ……」
その反応を見て、私は急に、聞くことをためらう自分に気づいた。
もし、リンちゃんが本当に彼女とか、そういう大事な相手だったら。
聞いてしまったら、今のこの関係が、壊れてしまうかもしれない。
「……何でもないです。忘れてください」
「え、なにそれ気になるんだけど」
「気にしないでください」
自分でも、驚くくらい早口になってしまう。
須藤先輩が、不思議そうに首を傾げた。
「咲奈ちゃん、今日なんか変じゃない?」
「べつに、怒ってません」
咄嗟に、そんな言葉が口から出てしまう。
自分でもびっくりするくらい、可愛げのない声。
「え、誰も怒ってるなんて言ってないけど」
「……あ」
しまった。墓穴を掘ってしまった。
自分でもよく分からないまま、なんで「怒ってない」なんて言葉が出てきたんだろう。
もしかしたら、心のどこかでは本当に、少しだけ怒っていたのかもしれない。
リンちゃんのことも、抱きしめられたことも覚えていない先輩に対して。
「じゃあやっぱり、何かあったんだ?」



