氷の君に、恋の歌を。

「今日は私が蓮斗くんを守るね」

恥ずかしいけれど、ちゃんと伝えたくて言う。
すると蓮斗の目がゆっくり細められた。

「……それ、うれしい」

小さな声。
でも、すごく大事そうな響きだった。

「だからちゃんと寝て」

「乃愛が帰るなら寝る」

「えっ」

「いてくれるなら、すぐ寝る」

まるで子どもみたいなことを真顔で言うから、乃愛は思わず笑ってしまう。

「少しだけだよ」

「それでいい」

ベッドに横になった蓮斗は、それでも乃愛の手を離さなかった。
熱い手のひらに包まれていると、自分まで胸があたたかくなる。

「乃愛」

「うん?」

「今日、送ってくれてありがと」

「当然です」

「頼れるな」

その言葉がうれしくて、乃愛はふわっと笑った。

「たまには頼って」

「たまにじゃ足りないかも」

「もう……元気ないのにそういうこと言う」

「元気ないから本音が出る」

そのひと言に、乃愛の頬が赤くなる。

蓮斗は目を閉じる直前、乃愛の手をそっと引いた。
思わず前に傾いた乃愛の額に、やわらかなものが触れる。

ほんの一瞬。
熱を持った、やさしいキス。

「おやすみ」

かすれた声でそう言って、蓮斗は安心したみたいに目を閉じた。

乃愛は真っ赤なまま、自分の額をそっと押さえる。

弱っているはずなのに、最後までずるい。
でもそんなところも全部、愛しくてたまらなかった。

今夜は乃愛が守る番。
そう思いながら、彼が眠るまでそばにいようと静かに椅子へ腰かける。

いつも守ってくれる人が、自分の前でだけ少しだけ弱くなってくれる。
それはきっと、信じてくれている証なんだと乃愛は思った。