氷の君に、恋の歌を。

次の日の朝。
乃愛は教室の前に立ったまま、小さく深呼吸していた。

原因はわかっている。
昨日、放課後の教室で蓮斗とキスしたこと。
思い出すだけで、胸がどきどきして落ち着かない。

こんな顔で教室に入って、ちゃんと普通にできるのかな。
そんな不安を抱えたまま、乃愛はそっと扉を開けた。

「おはよう、乃愛ちゃん」

友達の明るい声に、乃愛はあわてて笑顔を作る。

「お、おはよう」

なんとか返事をしながら席へ向かう。
でも、隣の席にいる人を見た瞬間、心臓が跳ねた。

蓮斗。
いつも通り静かな顔で、本を読んでいる。

昨日あんなことがあったのに、どうしてそんなに平然としていられるの。
乃愛はますます落ち着かなくなって、席に座る動きまでぎこちなくなる。

すると、不意に低い声が落ちてきた。

「おはよう」

たったそれだけ。
それだけなのに、昨日のキスを思い出してしまって、乃愛の頬が一気に熱くなる。

「お、おはよう……」

声まで上ずってしまった。