誕生日

「さっきまでの感動かえしてください」

「ハハッ、特別講義はこれで以上だ」

「ありがとうございました。でも下手くそなオチやめてください、後味悪いんで」


ハッハッハッ、と軽やかに笑いながらぐーっと両腕を前に伸ばしたまっつんは足取りも軽やかに室内へ続く扉をくぐる。

わたしは小さくため息ひとつ落としつつ、その後ろ姿を追って廊下を歩く。


まっつんの背中が大きく見えた。

同級生のそれとは違う、おとなの男のひとなんだな、と当たり前のことを思った。


『お前ひとりだけが主役ってわけでもない』

『お前と母さんががんばった特別な日』

『誕生日をくれてありがとう』


まっつんの低くて優しい声が何度も頭の中でリピートされる。


誕生日の主役はわたしだけじゃない。

ママだって、出産おめでとうって、祝福される立場だ。
少なくともわたしは、まっつんの意見に同意できる。

言わなきゃ。謝らなきゃ。伝えなきゃ、感謝。


「まっつんさよーなら!またあした!」