ほっとしたのも束の間、まっつんの瞳がほんの一瞬鋭く光った気がした。
「篠原」
踵を返し損ねたわたしは止まる。
「……はい」
「誕生日だってのになんか不機嫌だな、今日ずっと」
何もかも見透かすような視線に刺されて動けない。
逸らしたいけど逸らせない。
交わった視線は一方的にわたしを離さない。
「……なんでわかるんですか」
「俺を見くびるな?自分のクラスの生徒の機嫌くらいお見通しさ。何かあったのか?」
「……」
「言いたくないならいいけど。せっかく年に一度の誕生日なんだからもっと腹の底から笑えたほうがいいだろ」
ついてこい、と言って立ち上がるまっつん。
どんどん行ってしまう背中を急いで追いかける。
職員室から出てすぐそこの扉を開いて手招きするまっつんに駆け寄ると。
そこはグラウンドが見下ろせる外階段。
上履きのままジャリ、と砂の混じったコンクリートを踏む。
秋の風が肌を撫でる。
冷たくもなく温かくもない、ちょうどいいぬるさ。



